就業規則の周知
苦労して、労使トラブルを未然に防ぐための就業規則を作成しても、それを従業員に公開しなければまったく意味のないものになってしまいます。
労働基準法第106条、労働基準法施行規則第52条の2において、使用者は就業規則等を下記のようにして周知しなくてはならないこととなっています。
- (1)常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること
- (2)書面を労働者に交付すること
- (3)磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
会社は上記のような周知義務を負っていますから、裁判においても、周知されていない就業規則の効力を認めない下記のような判決が多く出されています。
- 日本コンベンションサービス事件(平成10年 大阪高裁判決)
- 就業規則における懲戒解雇された者には退職金を支給しないとする定めの新設について、適法な意見聴取が行われた上で届けられたものともいえず、一般的に従業員に周知した事実が認められないことから、その効力が生ずるものではないとした。
- フジ興産事件(平成15年 最高裁第二小法廷判決)
- 就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとした。
また、就業規則の手続として、労働者代表の意見聴取、労基署への届出、就業規則の周知などを経なければなりませんが、その効力は、どの手続を踏んだ段階で発生するのでしょうか?
これについては、色々と見解が分かれているようですが、判例によりますと、一般的には、労働者代表の意見聴取、労基署への届出については、これを欠いても就業規則は有効としていますが、周知されていない就業規則は無効と解しています。
それだけ就業規則の周知には気をつけていただく必要があります。